『来年の今日、同じ時間に、この場所で』
「あ!祐介〜!」
未来が大きく手を振った先をみると
懐かしいような初めましてのような…


祐介?


近くに来ると、祐介の面影が…
でも10年も経つと、
やっぱりその顔つきは大人で私の記憶の中にいる祐介とは違っていた。



これだけ会わない期間が長いと
顔も声も別人なはずなのに、
祐介とは不思議と昔のように意気投合した。


「お互い中身は変わらないねぇ」なんていうセリフがあちこちで聞こえるのが
なんだかわかる気がした。


「ふじさん、綺麗になっちゃったねぇ。
昔はあんなにイケメンだったのに!
良い恋でもしちゃってんの?」

祐介は、中学の頃も
「綺麗」とか、「好き」とか
そういう照れくさいコトを
素直に言えるタイプだったよね。

ベンとは全然違ったよね…。



「仕事にも慣れるのが必死で、そんな暇ないよ〜」

「そうなの?じゃあ俺とつきあう?」

「相変わらずチャラいなー」

私が笑って聞き流そうとすると、未来が祐介のスネにキックした。

「痛ってええええ!」

「あんたのそうゆうところがダメだって言ってるの!いい加減にしてよ!」

「え!ええええええ〜!未来って、まだ祐介と付き合ってるの?」

普段の連絡で、全然そんな話をしないから
とっくに別れてたと思ってた。

「別れたなんて
ひとことも言ったことないじゃん」

「た、確かに。聞いたことない。」


未来との連絡は、仕事の話や美味しいお店の話にオシャレの話ばっかりだったから…
言われてみれば恋愛の話はしてなかったな。と思った。


「あーあ、こんな暴力を毎日くらうぐらいなら亜子ちゃんと付き合っておけば良かったなぁ〜」

祐介が未来に抱きつきながら言った。

「あの…言動と行動が全然噛み合ってないんですけど…。しかも、なんで亜子ちゃんが出て来るのよ!」
思わずツッコミを入れた。


「俺中2の時、告白されてんの。
知らなかった?あー、ふじさんて鈍感だったもんねー。」

「え?亜子ちゃんが好きだったのって
ベンじゃないの?」

「美人が好きになる人は、必ずしもベンではないんですよ!俺だってモテてたんですー」


「だって、亜子ちゃんからベンに手紙渡すように頼まれたし、2人で笑って下校してた時もあったし…」

「あー、あれ?俺への告白の相談をしてたんだってさ。あーあ、もったいねーことしたなー。付き合ってたら今頃俺の彼女は美人モデルって自慢出来たのになー」

未来のほっぺをぷにぷに指で摘みながら祐介が言った。
また、2人でワイワイ小言を言いながらじゃれあい始めた。


10年も前のことなのに
亜子ちゃんがベンの事が好きだって勝手に決めつけてヤキモキしてた自分に恥ずかしくなった。

「浮かない顔しちゃって、どうしたの?
ああ!もしかして俺の話信用してないの?
それなら本人に聞いてみればいいじゃん。
もう少しで来ると思うよ!」

……‼︎

「ベン来るの?」

ちょっとだけ期待はしてたけど
確定情報を聞いたら、急に体が強張った。


「おやおや?もしかして?」

「な、なによ〜」

「ふじさん、
未だにベンの事が好き…とか?」

「………⁈」


未だに!っつーか、未だにってことは
前に好きだったって、バレてるの?

やだっ!

しかも、未だに!

ない、ない、ない、ない!

だって、もう10年も経ってるんだから。


「図星ってやつ?」

「違うよ!絶対ない!」
肩が上がるほど呼吸が荒くなった。
全力で否定したせいか祐介が耳を塞いだ。

「っるせぇ〜な。」

後ろから近づく声は、低くて知らない声だったけど、なんとなく聞きおぼえのあるような口調だった。

振り返ると綺麗な透き通った栗色の髪が見えた。


やっぱりそうだ。


この口調はベンだ。


私が知ってるベンよりも背も高く、
カラダもガッチリしているけど


間違えなくベンだ。


だって、ほら私。
あの頃と同じように目が離せなくなってる。




< 26 / 59 >

この作品をシェア

pagetop