『来年の今日、同じ時間に、この場所で』
「嘘でしょ〜!そんなに大きくなっちゃって
それにカッコよくなっちゃってー」

「おい、おい。親戚のおばさんじゃないんだから。」

それはそうなんだけども…
でも信じられない!

あんなに可愛かった篤志が
こんなに格好良くなっちゃって
全然、男の人って感じなかったのに。

「…ダレ?」

いつもより低い不機嫌な声。

…あ。ベンの存在忘れて懐かしさに盛り上がってしまった。

「中3の時の同級生の小川篤志くん、
で、こっちは前田勉さん。」

お互いの紹介をすると

「真凛の彼氏?」

「え…と…。」

それは私も聞きたいところである。

彼氏…て紹介しても、いいのかな?

横目でチラッとベンの顔をみた。

「どうも。
悪いけど、俺たち帰るとこなんで。」

表情一つ変えず一言だけいうと
私の腕を強く引っ張った。

呆然とする篤志に何も声をかけられず
私はベンに引きずられるようにその場を離れた。


怒ってるの?

何も話さないベンの表情は斜め後ろからは確認出来なかった。

「前田さん?」

「…でいいよ。」

「ん?なに?よく聞こえなかった」

「だから〜、ベンでいいよ」

「う、うん。」

彼氏か?と聞かれて肯定もしなかったけど
否定もしないベンは
これまで名前の呼び方なんて気にもしなかったのに、突然「ベン」と呼ぶように促した。

これって、彼女っていう指定席を確保したって思っていいんだよね…?


「イタっ!」

急にベンが止まるから背中で顔面をぶつけた

「急に止まって、どうしたの?」

駅に着いたわけでもなく
そこは
街灯の灯りしか付いていない裏路地だった。


無言で振り返るベンは
いつにも増して眉毛がキリッとしていた。

「どうしたの?」

「っるせ。」

街灯を背にした私は後ろに逃げ場もなく
ただただベンを受け入れた。

そんなに不機嫌なのに
こんなにも優しいキスをするあなたは…

今、なにを思ってるの?



「軽々しく他の男に抱きつかれたりすんな」

「え、、あれはそういうんじゃなくて…」

「真凛」

「わかった」

ズルいね…
初めて下の名前で呼ばれたりしたら
そう返事するしかないじゃない。

付き合うとか

すきとか

私たちにの間には証明できるものが何もない

見えない束縛だけが
「私がココにいていいんだ」と思わせる。

3回目のキスも
誰かの行為を帳消しにしたいだけで…

私に愛を伝えるものではなかった。




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