ブーケ・リハーサル
「高山さん、ちょっと来てください」

　田中さんに呼ばれ、そのまま副社長室へと向かった。

　副社長室は大きなデスクに大きな窓。座り心地の良さそうな応接セットが置かれている。誰もが副社長室と聞いて想像するような部屋であった。

　大きな窓をバックにデスクの前に座る副社長の向かいに立った。

「秘書課は一人ひとりに会社携帯が支給されるのだが、急な人事だったために準備ができていないんだ。申し訳ないが、一週間ほどは高山さんの個人携帯で連絡を取ってもらうことになるが構わないか？」
「はい。わかりました。では、私の携帯の番号とアドレスを」

　ポケットからスマホを取り出し、副社長と田中さんと連絡先を交換した。

「高山さん、一つ確認したいんだが」

　スマホをポケットにしまうと、副社長が聞いてきた。なんだろうと思い「はい」と返事をした。

「君はフランス語ができると、小論文の中で書いていたけれど、どれくらい話せるんだい？」
「簡単な日常会話なら話せます」
「では、ある程度の意思疎通ができると？」
「はい。祖父は学生時代からの友人にフランス人がいまして、小さい頃からその人に直接フランス語を習いました」
「わかった。ありがとう」
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