あなたしか愛せない~皐月お兄ちゃん編~
純粋で真っ直ぐで


同じように時間が過ぎていたと思っていたのに、時間の感じ方と成長は全く違っていた。

俺は何も成長してないのに、夏帆は少し会わないだけで前と全く違う。


お互いの間に、今までない変化を感じ始めていた。



「皐月!こっち」

「神戸、悪い。遅くなった」

数日前の同期会で飲む約束をしていた。

「お疲れ様。何かあったの?」

グラスを合わせ、乾杯をする。

「あぁ。生徒指導の方でちょっとな。待ったか?」

「ううん。私もさっき来たばかりだから」

神戸と二人で飲むのは初めてではない。

大学の時は、たまにこうして飲んでいた。


「私さ、ずっとあの日から気になってることがあるんだけど」

「あの日?」

神戸がグラスを置きながら顔を覗き込んできた。

「あのセーラー服の夏帆って子は誰?」

「ぶっ…」

唐突な質問に、思わず噴き出してしまった。

「ほら、動揺してる…皐月、この間から変なんだよね」

「へ…変ってー…」

神戸、夏帆のことをまだ覚えていたのか。


「生徒との恋愛話のことになると動揺するし、その夏帆って子のことも隠そうとするし」

怖いな…バレてる。


「まさか、あの夏帆って子と付き合ってるんじゃないでしょうね?」

「は!?」

ぶっ飛んだ話に大きな声が出てしまった。


「そんなわけあるか…近所の子供だって言っただろ」

「でもあの子、皐月のこと好きよね。あんな子供でも、私のこと女の顔して睨んでたし」

少ししか顔を合わせてないのに、神戸にも気付かれてるー…

「皐月も気付いてるんでしょ?あの子の気持ち」

「え…いや」

「うそよ。気付いてるはず。そうでしょ?」


何でこんな追い詰められなきゃいけないんだ…

視線を思わず外してしまう。


「皐月も好きなの?あの子のこと」

「!」


その質問に再び、神戸と目を合わせた。


「…そんなわけないだろ。ただの近所の子供としか見てない」


その通りだ。

たまたま公園で出会って、逆上がりを教えてあげて懐かれただけだ。


俺が、夏帆を好きであってはならない。


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