ずっと前にね
九章・年越し

どっち?

今年も後数時間で無事に終わる。心残りを1つだけ上げるとするなら、今年も柏崎先生に思いを伝えられなかった事かな。

「大丈夫ですか?」

柏崎先生のお母さんが昔のように皆で年を越しましょうと提案してくれて、祖父母と一緒に私は柏崎先生の自宅にお邪魔していた。けれど、柏崎先生はタイミング悪く風邪を引いてしまったらしい。
お姉さんもお母さんもお父さんも、私の祖父母もお酒が入って酔っぱらっていたり、気分がハイになっていたり。柏崎先生は治るものも治らないと寝室にいた。

「悪いな・・・、千里・・・」

氷枕で頭を冷やす柏崎先生。少しだけ弟の事を思い出して泣けてしまった。父親は違うけれど同じ母から生まれた弟。私も姉になれたのだと喜んでいた。だから弟が風邪を引いてしまった時にはこっそりと寝ている部屋に入り、内緒だよと言って弟の好きなプリンを食べさせてあげた事がある。
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