ずっと前にね
柏崎先生がどうのの前に皆の期待に答えなきゃいけないんだよね。私はもう一度振り返って柏崎先生を見詰めた。行ってこいと頷く柏崎先生にまた背中を押されたような気がして、私はマイクのあるたけちゃんの隣に駆け出した。

「たけちゃん。私、マドンナじゃないよ」

「じゃあ何だってんだよ?」

「ライオンになりたい猫」

「俺は猫の方が好きだぞ?」

「蝶になりたい蛾」

「どっちも蝶だろ」

「じゃあ何だと思うの?」

否定しかしてこないたけちゃん。でも、自分の事は自分が一番よく知っているよ。私はたけちゃんたちが思っているほど素敵な人じゃない。
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