友達になれなくて
新学期の夏休みボケが薄れた頃

突然
恭子ちゃんから呼び出されたのだった。


もしかして、いつものジャージの一連
見られてて なんか言われるのかな?

泣かれたらどうしようかな。




「梓ちゃん。
私、門倉くんのことが好きです。」




…ん?



なぜ、それを私に?




「梓ちゃん?
私、門倉くんが好きなんです。」



う、うん。知ってるし…
というか、気づいてたけども。




だから、なぜそれを私に言ったの?



不思議な展開に
思わず黙ってしまっていた。



恭子ちゃんは
黙る私に少し首を傾げた。



「あの…協力してほしいの!」




あーぁ、そういうことね。



恭子ちゃんが謎の告白をして来た意味が
ようやく理解出来たのだった。




でも



でも…



こんな可愛い恭子ちゃんに
門倉に告白なんてされちゃったら
絶対付き合っちゃうじゃん‼︎


そしたら



そしたら、もう…



もう⁉︎







『ごめん‼︎私も門倉好きだから‼︎』





言うつもりなんてなかったのに…
思わず口に出てしまったその言葉に
顔が熱くなった。



恐る恐る
恭子ちゃんの表情を見ると

意外にも、
泣いたりするわけでもなく
むしろ、今まで見たことがないくらいの
無表情で

「じゃあ、お互いライバルだね!」


と、どこかの古臭いテレビドラマかのような
小っ恥ずかしい台詞を残して
立ち去っていった。



あーぁ。

後悔したのは言うまでもなく…




あーぁ、
帰ろ。




上履きを下駄箱に入れようとした瞬間
私は固まった。





門倉…⁉︎




なんで、ここにいるの?




そりゃ下駄箱だもんね



いや、とっくに部活が終わって帰ったはず‼︎




なんで⁈




もしかして、聞こえた?



聞いてた?




いつ来たの?




いつからそこにいたのよー!




この距離なら聞こえないよね?




私そんなに大きい声で話してないよね?




10歩くらいの距離?
いや、もうちょっとあるかな。




聞こえてたのか⁈





あーぁ、もう立ち去りたい。



何事もなかったかのように立ち去りたい。



どうする!私‼︎




どうすることも出来なくて
ただ、ただ
門倉から目を逸らすことしか出来なかった。



その瞬間、
前髪が目に優しく
2回、かぶった。




「また、明日なー」


私の後ろを走り抜ける足音は
踵を踏みつぶして履いてるのがわかる
聞きなれた門倉の足音だった。




アイツが触れてきた髪を
なんとなく手グシで直した。






頭の中はすでにパニック状態だったから
きっと
どうしようもない顔してるんだろうな
私。
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