マリンシュガーブルー

 急に血が熱く沸く。怒りだった。そして見抜けなかった悔しさ。弟が一生懸命経営しているうちの店を、勝手に利用していた! ビジネスマンに見えてこっちの男達のほうが警戒すべき反社会的な人間だった。

 もしかしてあの人も仲間? 下見か何かに来ていたの?

 おう、持ってこさせろ。こっちはええ仕事させてやっていたんやから。言うとおりにしたら、許したるわ。残りぜんぶ、もうひとりに持ってこさせえ――と兄貴が血を流しているデニムパンツ男の腕を踏みにじっている。

 完全に黒スーツ男達が優位だった。だからなのか、気がつくと眼鏡の男が美鈴を見てにやにやしている。

「大丈夫やけん、怖いおもいさせんって」

 そう言いながら、美鈴の頬にキスをしてきた。

「や、やめてください」
「ほら、ええ声やと思っていたんやって。綺麗な喋り方するやろ。惚れ惚れしとったんや。ほんとは声かけたかったんじゃけえ」

 冷たい銃口をすうっとこめかみから首筋に滑らして、それとなく脅してくる。なにもできないから、彼にされるまま。キスどころか舌先でちろっと耳たぶまで舐めてきた。

「い、いや」

 すこしでも濡れたような声を漏らしたせいか、男の眼が輝いたのを見てしまう。
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