華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~

私はひとり、部屋までの長い廊下を歩く。
行くまでの最中、ずっとナディを襲った者が誰なのかを考えていた。

私を嫌う人間。
そう言ってしまえば、この国の人間はほとんどが嫌っていても仕方ないだろう。

しかしその中でも特別私を嫌う人間は、なんとなくだが目星はついてる。


けれど、これといった証拠がない。
押されたという証言だけだ。

これではどうしようもない。
推測でしか考えることができない。

犯人が分からないのにこのことを王子に言っても、事を大きく広げてしまうだけだろう。
ましてや王子との間に微妙な壁を作ってしまった以上、軽々しく相談もできやしない。


頼れるのは自分だけだ。
けれど、ひとりで抱え込むには重すぎる。


……ああもう!
私はどうすればいい!?

どう動くのが一番最良なの!?


部屋に戻り、雑に身体をベッドに投げ込んだ。
天井を見つめながら、ひたすら頭の中はそのことがぐるぐると回っている。


その日は結局、ひたすら部屋の中で考え込んでいた。

食事が運ばれてきても、喉を通らない。
考えることといえば、誰がナディを襲ったのかということだけ。



――でもそれは始まりに過ぎなかった。

その日から、私の周りで色々な事件が起こることとなる。
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