華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~

――部屋の扉が叩かれる。


「失礼するわね、アレク」


そう言って入ってきたのは、エリスだった。

「ああ、エリスか」

「様子はどうなの?」

「まだ目覚める気配がない。傷が痛むのか、時折唸るような声を上げるだけだ」

エリスはベッドで眠るソフィアの傍へ行くと、優しく顔を撫でた。


「こんなことになるなら、意地悪なんてしなきゃ良かったわ」

「悪趣味なんだよ、お前は」

「だって暇だったんだもの。ちょっとからかってみようかなって。本人はなるべく冷静に対処していたつもりだったようだけど、明らかに動揺していて、……可愛かったわ」


……そう。

エリスは俺に対して、ひとかけらの恋心すら持ち合わせていない。

彼女は、昔からフェルナンド一筋だった。

幼い頃、俺と一緒に遊んでいたフェルナンドを見かけて、一目惚れ。
それ以降、エリスの頭の中はフェルナンドだけ。

もちろんエリスの気持ちに応え、フェルナンドもエリスに心寄せてはいたが……。

< 144 / 169 >

この作品をシェア

pagetop