あべこべの世界
 孝志に会うためにに身支度に時間をかけるのをやめてしまったのはいつ頃からだろう?

 ベッドのサイドテーブルの上に充電アダプターだけがあるのに気づき、やれやれとまたベッドから抜けだし、ワンルームの隅に投げだしたバックの中からスマホを取り出す。

 バックの横には脱ぎ捨てられたスカートにシャツに、ストッキング。

 昨夜はまだちゃんと着がえて顔も洗って寝たのだから私にしては上出来だ。

 メイクを落とさずに寝るのはよくあることで、冬場ひどいときはコートを着たまま寝てしまったりもする。

 充電が残りわずかなスマホにアダプターを差しこみ、孝志にメッセージを送る。

 今日、うちでご飯でもいい? 昨日飲も過ぎちゃって。

 1分も経たないうちにメッセージは既読になり、孝志から返事がくる。

 白いウサギがお尻をふりながらOKサインをしているスタンプだ。

 孝志がこんなスタンプを使うと知っているのは日本中で私ひとりだけだろう。

 まさかこれと同じものを男友達に送っているはずはない。

 ウサギの後に文字がつづく。
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