BAD BOYS





「テメエ、起きたのかよ。」


金髪が女の子に向けていた鋭いそれを俺へと写す。
その金髪の顔はじめて初めて気づいた。
こいつら、東のトップだ。


「手当、ありがとうございました。」


そんな人たちに手当されたなんて、全国の女子が羨ましがるだろうなあ。
ペコリと、頭を下げると盛大な舌打ちと共に金髪はキッチンへと姿を消した。


「ねえ~、君名前は?」


ゆるゆる口調が、俺に一歩近づく。

手を掴んでいるからか、後ろの女の子の体が少し強ばったのが嫌でも伝わってきた。
さっきまで、責められていたからか、それとも普段からなのか。


「三宅デス。さっきオレの免許証みたって言ってたじゃないですかー。」


「いつから聞いてたの?」


目の前の男の表情が変わった、ゆるゆるとした口調もなく、ただ鋭さだけが残る。


「大体、『で?誰だったんだ?』ぐらいからですね。」


「...最初から」


ポツリとそう呟いた後、俺の胸倉を掴みあげた。
短期だなあ。短気は損気だよって誰か教えて上げて。


「は、ハルくん!!」


「名前呼んでいいとか言ってないよね~?おれ。」


「っ...」


こんな可愛い可愛い天使に、何いってんの?このゆるゆる君。
少しビクリと身体を揺らした天使ちゃんの手に、一瞬だけ安心させるように触れた。

東のトップ以外は、この'お姫様'を認めてはないっつーことか。


「帰りたいンデスけど。」


「帰らせるわけないよね~、俺らのバショ知られただろ。」


じゃあ、目隠ししてでもいいから返してくれませんかねー。
なんて言えるわけもなく、胸ぐらを掴んでいる手に触れる。


「っ、」


一瞬息を呑む相手に、にやりと笑って強く押した。
驚いた為、掴む力が弱くなっていたのか肩を少し押すだけで解放された。
あーあ、服皺になっちゃったし。


「シン。とりあえず、落ち着いてください。貴方も少しお話をさせて頂きたいのですが。」


「...わかりましたー。」


タイミングを見計らったのか、偶然なのか、メガネくんにソファに無理やり座らされた瞬間に、目の前にマグカップが置かれた。

チラリと置いた人物を見てみると、眩しいほどの金髪。


「ありがとうございます。」


と頭を下げた。
それを見てか、金髪は少し気恥しそうに頬をポリポリと描いた後、俺の横へと腰掛けた。

向かいにはゆるゆるくんとメガネくん。
天使ちゃんは知らぬ間にどこかへ行ったみたいで、姿を消していた。


「さてと、とりあえず質問に答えて頂けますか?」


ゆらゆら、と湯気が上がる。
中身は、コーヒーだろうか。黒いナニカ。
それに反射する俺の顔が、あの日のように歪んで見えた。



『ーーどうして?』



ホント、どうしてなんだろうな。






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