君の本当をこの瞳で見つめて。


タルトをぱくりと一口食べて、思わず頬を抑える。

ほっぺたが落ちるんじゃないかってぐらい、美味しい。

それぞれのフルーツが酸味や甘みを出して、それが口の中で上手く混ざって、でもそれぞれのフルーツの味は負けることなくきちんと主張もしてくる。

タルト生地も外はさっくりしていて、でも噛む事にしっとりと滑らかに口の中を滑っていく。

一つのものなのに、二つのものを贅沢に味わっているような感覚に、思わずうっとりとしてしまう。

ああ……幸せって正しくこれのこと。


「今日も美味しそうに食べてくれますね、貴方は」

「壱目さんこれ本当に美味しい!!なんかもう、美味しい!」


もう一口食べてはまた頬を抑えて、笑みをこぼす。

そしてじーっと私に視線を送る猫に、目を向ける。

飲むの……勿体ない。

でも、壱目さんの作ったものだから絶対絶品。

飲まないのも……勿体ない。

フォークを口にしたまま考えていると、壱目さんが咳払いを一つした。



< 28 / 81 >

この作品をシェア

pagetop