Memorys ‐過ぎ去りし時間‐

 「っ一条さん」

控えめに声をかける。
叩かれた頬が痛々しい。

 「おはようございます。瀬口先輩」

何もなかったかのようにそう平然と挨拶をする彼女。
さっきまでのあの瞳はもう見えない。

見間違いだった…?

 「…あの、大丈夫?」

気の利いた言葉すら掛けられない自分が情けなくなる。

「何のことですか?それより、先輩はどうしてここに?」

彼女は何もなかったことにしたいようだし、
掘り下げない方がいいってことかな。

 「生徒会室に今から集まってくれるかな?急でごめんね」

 「そうでしたか。いえ、こちらこそお手数お掛けしてしまいすみません」

彼女は僕に頭を下げて生徒会室へ行ってしまった。

あのことは聖風君達に言うべきだよね…
でも本人がそれを嫌っているとしたら、僕はどうするべきなんだろうか?

ひとまず、このまま双子も呼びに行く為、彼女とは反対方向に足を進めた。

     __瀬口 渚side end__

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