今日から家族になりまして。



その時のことだった。




陽菜は、ゆっくり、ゆっくりと顔の角度を上げていく。




ちょっとずつ、目が見え、鼻が見え、口が見える。




そして、右にやったり、左にやったり、下にやったりする視線を、恐る恐る俺の顔の方へと向けた。




震えるようにまばたきが多く、陽菜の長いまつ毛が際立つ。




そして、俺の目をしっかりと見た陽菜は、さっきのような青い顔をすることはなく、なぜかその瞳はだんだんと潤んでいくように見えた。




……陽菜が


俺の目を見ている。


あんなに意地でも見ようとしなかったのに


見たら化け物を見てしまったかのような顔をしていたのに


俺のことを見るのを……恐れているような感じだったのに


今、陽菜はこんなにもまっすぐ


俺を見てくれている。


少し強気に


そして、少し弱気に。







初めて近くで見た陽菜の瞳は




惹き込まれそうで




とても綺麗だった。


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