結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
今度は想定外で、思いっきり眉間にシワを寄せてしまう。再び焦燥と、怒りにも似た不快感が急激に湧き起こる。

そんな俺に、氷室は真剣な眼差しを向け、しっかりと言い聞かせるような口調で言う。


「彼女は、葛城さんからの交際の申し込みを受け入れようとしています。泉堂社長、あなたのために」


ドクン、と胸の奥で鈍い音が響いた。

俺のために葛城からの交際を受けるだって? 一体、なぜそんなことになっているんだ。

以前葛城の話を出したとき、綺代の様子が少しおかしいように感じたのはこのせいだったのだろうか。

なにがなんだかさっぱりわからないが、とりあえず俺の知らないところで事態は危機的状況にあるらしい。

それを察知することができなかった自分に、腸が煮えくり返りそうだ。余裕という名の袋に穴が空いたかのように、心にゆとりが無くなっていく。

とにかく事情を知っているらしいこの男を問い詰め、彼女を奪いに行くしかない。

ゆらりと前屈みになり、憤りを抑えるようにドンッと拳でテーブルを叩いた俺は、目の前の彼を睨み据える。


「……どういうことか、きっちり吐いてもらおうか」


普段の穏やかさを消し、凄みのある声で迫る素の俺に、氷室は目を見張って初めて驚きを露わにした。




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