結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「今日会ってくれたってことは、僕を選んでくれたってことでいいのかな」


大きな瞳からまっすぐ向けられる視線を受け止め、私は「……はい」とゆっくり頷いた。

彼を選ぶ決心はついている。でもその前に、大事なことを承知しておいてもらいたい。

安心したような笑みを浮かべる葛城さんに、私は真剣な表情で続ける。


「ですが、ひとつだけ、私からも条件があります」

「なに?」


メニューを開こうとした彼はその手を止め、再び話を聞く体勢になる。

私の頭に過ぎるのは、葛城さんを選ぶと決めたことを咲子ちゃんたちに打ち明けたとき、難しそうな顔をしていた彼女がくれた言葉。


『このまま言いなりになるのは悔しくないですか? せめて、言いたいことは正直に言ったほうがいいですよ』


確かに、私だけが葛城さんの出した条件に振り回されるのは不公平だ。結局は彼の要求を呑むことになるかもしれないけれど、最後に悪あがきをしてみようと思う。

今こそ理性的な話し合いをしようと、彼を見つめて口を開いた。


「私に好きな人がいるというのはお話ししましたよね。彼への気持ちは、しばらく持ち続けると思います。それでも、私を受け入れてくれますか?」

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