結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
それからすぐに目が覚めて、最初は鮮明に覚えていた夢の内容も徐々に薄れていく。

しかし、お父さんの『こうなることは必然的だったんだから』というひとことだけはなぜか残っていた。

久々に現れたお父さんのおかげで不思議な感覚を抱きつつ、着替えて一階に下りると、慌ただしく朝の用意をするお母さんと紫乃ねえがいた。いつものように挨拶をして、私もその中に混じる。

すっきりと晴れた空と、満開に近づき始めた桜のコントラストが綺麗な今日、サンセリールでは入社式が行われる。研究課にも新メンバーが増えるため、課の雰囲気もフレッシュさが増しそうだ。

清々しい気分で軽く朝食を食べる私に、お母さんが問いかける。


「今日、綺代は夕飯いらないのよね?」


そう、今日は仕事が終わったら大事な約束がある。それを楽しみに一日乗り切るつもりだ。

「うん」と頷けば、ひと足早く朝食を食べ終えた紫乃ねえが、歯ブラシをくわえながら羨ましそうな目で見てくる。


「社長様とデートか。“今度はぜひ姉も一緒に”って言っといてよ。待ってるから、豪華ディナー」

「断固拒否」


下心ありまくりの姉を、すかさずぶった切った。

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