結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
いざ本人が出ないとなるとがっかりしてしまう面倒な自分に呆れるけれど、まだ気を抜くわけにはいかない。一応メッセージを残しておかないと。

うなだれた体勢を元に戻し、退院したことと明日から復帰することを事務的な調子で伝えて、電話を切った。

部屋の中は快適な温度であるにもかかわらず、背中は汗でしっとりしている。電話ひとつでこんなに緊張するなんて。

昨日、お見合いの結果を仲人に報告したときはさっぱりとしたものだったのに。

お見合いの返事は翌日までにすることになっており、結局お断りしたのだ。

社長の件がなければ、私のほうは一応OKにしようかなと思っていたのだけれど、気持ちが変わってしまったから。

私の頭の中、今は社長のことでいっぱいなんだもの。

恋愛感情ではないけれど、甘利さんの印象も、もう一度会いたいという思いも薄れさせられてしまった。


「とりあえず、任務は完了したわ……」


大きな仕事を終えたかのような充足感と疲労感を抱きつつ、今日の食事当番である姉が作ってくれている夕飯を食べるため、一階のダイニングへと向かった。


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