彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
「潤にぃ、待って」
家を出た通りの街灯のところに寄りかかっている潤兄。
うわ、様になってる。
浴衣姿の潤兄は、色気さえ漂わせてて。お祭りの会場へと行くすれ違う子たちもチラチラ見てる。
口を開かなきゃかっこいいのに。潤兄。
今思えば初恋の人は潤兄だったんだ。
あの頃はかっこいいというよりは可愛いタイプだったのに、潤兄が中学生になった頃から急にかっこよくなって。まだ小学生の私はそれにドキドキしたっけ。
潤兄は私に気がつくと「遅いっ」と一言。
「ごめん。ゲタだからうまく歩けなくて」
て、足元を指差し答えたけど、視線をそのまま潤兄の足元にむけると潤兄もゲタだった。
そっか、コンパスの違いか。
そういえば、主任と歩いた時もなかなか最初は追いつけなかったっけ。
追いついて隣に並んで歩き始める。
潤兄、主任と同じぐらいの身長なんだ。
ゲタ履いてるから潤兄の方がちょっと小さいのかもしれないけど、でも……
「で?桃、何食べたい?」
子供のころもこうやって文句を言いながらも一緒にお祭りに来てくれた潤兄。
あの頃買ってもらって一緒に食べたのは、
「「チョコバナナ?!」」
顔を見合わせて同時に言ったから潤兄は噴出しちゃって、
「うわぁどうしてわかったのー?」
「桃が相変わらずすぎて…」
潤兄は下を向いてなんだか笑いを堪えてる?
しばらくそうしていたけど、なんとか呼吸を整えると潤兄は「桃が変わってなくてよかったよ」そう言って優しい顔で頭をぽんぽんってするから。
なんだか胸の奥がきゅってなって、あの頃の思い出と一緒に気持ちまで思い出してしまう。
「潤にぃばっかり大人になっちゃってさ。私はどうせ子供っぽいですよ」
そんな気持ちを蹴散らすように、憎まれ口を言ってみる。
……だから子供っぽいってわかってるんだけど。
「そんなことない。桃は十分大人になったよ……変わってないのは、俺のほう」
潤兄は下を向いてしまって最後の方はよく聞き取れなかったけど。
少しは大人になったって少しは認めてくれたのかな?