彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
次のクエストは?

朔也さんから受けたミッションは 主任を誘ってお店に行くこと 今までこんな難しいクエストなかった

バレンタインは二月の真ん中で、それから二週間、お誘いするきっかけを狙ってた。

望亜奈さんからは「ストーカーみたいだね」なんてバカにされながら。



『アイツと一緒にきてよ』


朔也さんと約束したのに、あいかわらず主任は忙しいまま。
短い二月はあっと言う間に終わってしまった。


三月になれば新モデルが発売と、新年度を迎える前に買い替えや新規の顧客獲得に一番忙しい時期がやってくる。
私も店舗のヘルプや他店舗からの問い合わせや、日々の業務にと忙しい日が待ってる。


そんなある日。
めずらしく主任が一日社内だという日。
こんなのは月に一度あるかないか。


「天ヶ瀬さん、会議室までお願いします」


眉間にシワを寄せ、PCに向かっていたはずの主任が話しかけてきた。
しかも、仕事の指示ではなく会議室。

月に何度か行われる会議。
参加メンバーはおもに営業。もちろん私は参加したことがない。
だから会議室ってほとんど入ったことがないんだけど。


会議が今からあるわけでもないし
他に誰か呼ばれているわけでもない

主任は私だけを呼び出した。

主任の背中を見つめながら、そのまま会議室についていく。

怒られるようなことした?私

会議室のドアについているプレートを使用中にするとそのまま主任は部屋に入っていったので、私も恐る恐る後についていく。


「失礼、します」

「ここに座ってください」

「は、い」


いつもとは違う角度から見る主任。
腕を組み左手を口元の辺りに置き少し考えるようにしてからそっとメガネのブリッジの位置を直す。
私はそんな姿にさえ目を奪われて見てしまう。


「天ヶ瀬さん、営業に興味はありますか?」


ボンヤリと見ていた私に対して主任の口から出たのは意外な質問。

それって同行とかじゃなくって、毎日店舗を回ったりするあれ、よね?
今だって補佐だけど営業部所属だけど。


「仕事内容は多岐に渡りますし、大変そうです」

「いえ、そうではなく興味がありますか?と聞いています」


興味があるなしで言えば……


「営業補佐としてと言う意味では興味があります。同行させていただいてすごく勉強になりましたし」

「営業、やってみませんか?」


は?
今なんて?
私が営業?
ないないないない


「やってみません!」


あ、上司に言う言葉じゃない!
あまりにも慌てすぎてうっかり頭で考える間もなくそのまま言葉が出てしまっていた。
そういうの、最近多い……
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