彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
11時過ぎた頃、


「天ヶ瀬さん、そろそろ出られますか?」


いつの間にか主任のデスクは綺麗に整理され、すでに外出する準備態勢で……


だからね。何時に出るとか言ってくれればそれなりに色々準備できるんですけどね。


「あの、このページだけ入力させてください」

「わかりました」


どうしてもページの途中で入力をやめることが出来なくて主任にお願いしてみた。

案外あっさりその作業の継続を許され、資料に目を通し始めた主任を横目で確認すると入力作業に戻る。

数分で入力を終えると、主任に声をかけてカバンを取りにロッカールームへ。


「すみません、お待たせしました」

「はい、では行きますか」


主任は、名前の貼ってあるボードの前にいくと行き先と天ヶ瀬同行と書き加え、最後に直帰と書いた。


「今日は戻らないので、忘れ物のないように」

「あ、はい」


戻らないって……

だって、私車で出勤してるの主任も知ってるはずで。

昨日帰らないなんて言われなかったから、もちろん今日も車で。


「天ヶ瀬さんの家、近くですよね?」

「え?あ、はい。車で10分ですけど……」

「ついて行きますから車置いていってください」

「は?」


だからね、主任。
説明してくれないとわかんないですって。私、そんなに察しよくないんです。

あ、でも、「は?」っていうのは上司に対して失礼か。なんて思ってると、


「帰りは送りますので」


え?それだけ?理由は?

て、主任にそれを求めちゃダメか。


会話は必要最低限。


怖いわけじゃない。

だけど近寄りがたいオーラを纏っていて、店舗のスタッフさんたちも素敵とか言いながらもいまだ誰も近寄れていない。
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