ケーキ屋の彼
5-2

「柑菜さん、心配したよ」


別荘に帰ると、玄関で秋斗が柑菜のことを待っていた。


眉間にしわが寄っていて、しかしどこか力が抜けている。


その姿を見て、柑菜は不謹慎にも嬉しく感じてしまう。


「あんな風にいきなり走っていったら驚くよ」


笑って謝ろうとした柑菜だったが、秋斗の顔が真剣であったために「ごめんなさい」と頭を下げる。


それを見た櫻子は、柑菜のフォローをするように「柑菜ちゃん、今日携帯の充電器忘れたみたいで、それを買いに行ってたんです」と秋斗に伝えた。


「そっか、……怖い顔してごめんね」


秋斗は、柑菜の下を向いている頭の上に手を乗せ、ポンポンと優しくたたいた。


その手は、柑菜を包んでくれるような感じがした。


ーー手、握りたい。


柑菜はそう思ってしまう、しかし、その手をぎゅっと握って柑菜はその思いを押し込めた。


櫻子は、その二人の様子を見て、そうっと玄関からいなくなる。


ーーどうして、諦めるなんて言うのかしら……。


秋斗の柑菜を見る目、態度、そしてあの手。


櫻子の目には、秋斗が柑菜に対して何か特別な感情を持っているように見えるのであった。

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