ケーキ屋の彼

3人は適当にメニューを選ぶ。


櫻子は、程よく人がいる場所を選ぶと、そこに座った。


「いただきます」


緊張している柑菜に、愛想笑いを浮かべる櫻子、そしていつも通りの亜紀。


柑菜は、緊張しすぎて今食べている料理の味を楽しむ余裕がない。


そして柑菜は、今日の帰りにケーキでも買って帰ろうと思うのだった。


「亜紀ちゃん、柑菜ちゃんに謝ることないかしら」


突然、櫻子は前置きもなしに本題に入った。


その言葉を聞いた亜紀は、一気に明るさが消え無表情になる。


「……ごめんなさい」


箸を置き、柑菜のほうを向いた亜紀は頭を下げてそう言った。


「嘘ついて、ごめん」


「どうして、嘘ついたの?」


柑菜はあくまでも怒るのではなく、冷静な態度で亜紀に接する。


亜紀に対して何も思っていないわけではないが、恋愛は時に友情さえ奪ってしまうことを柑菜は知っていた。


「美鈴さんに幸せになってもらいたかったから。ずっと好きだったって聞いて……でもまだまだ日の浅い柑菜はきっとすぐに諦められると思った」


「でも、私が諦めたからって必ずしも美鈴さんが幸せになるかなんて分からないよ?」


「うん、でもあの時はね、とにかく柑菜さえ諦めてくれればってそれしか考えられなくて、でもあとで考えたらそれは間違いだったって気づいた……そんなことしてもきっと誰も幸せにはなれないんだよね」




< 130 / 223 >

この作品をシェア

pagetop