ケーキ屋の彼

「柑菜ちゃん、驚きすぎ」


ふふっと上品に笑う櫻子は、その家柄をよく表していた。


「だって……私、分かりやすかった?」


顔を赤くした柑菜は、櫻子に不安げに聞いた。


ーーもしかしたら、本人にもバレているんじゃないのかな。


柑菜の心は、ばれた、というよりもそればかりで埋め尽くされる。


「恋する顔の柑菜ちゃん、可愛かったわ」


その言葉に、恥ずかしさを覚える柑菜は、顔を両手で覆った。


そんな柑菜を、子供を見るような暖かい眼差しで見る櫻子。


いつもの柑菜と、ケーキ屋での柑菜。


でもきっと、ケーキ屋での柑菜しかみたことのないあの人からすれば、柑菜のいつもは恋する柑菜。


柑菜の秘めた恋心は、こうして徐々に広まっていく。

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