ケーキ屋の彼

柑菜たちは、いったんそのカフェで休むことにした。


チョコレートの甘さに合いそうな、ブラックコーヒーの香りを感じる。


柑菜は、先ほど買った真莉のチョコレートを見ながら『コーヒーと一緒に食べたらきっと合うんだろうな』と思う。


カフェでコーヒーを楽しんでいる人たちは、テーブルの上に買ったばかりのチョコレートを広げ、優雅な時を過ごしていた。


「俺、みんなの分買ってくるよ」


涼は、3人からそれぞれ飲みたいものを聞き、それを買うために行列に並んだ。


柑菜は、その場を見渡す。


多くの人がいる中、休憩を取っているのか、どこかへ向かう真莉を見つけた。


「ねえ、ちょっと私席外すね、でもすぐ戻るから」


「うん、分かった」


亜紀からの返事を聞き、すぐに柑菜はそのあとを追う。


「真莉さん!」


多くの人の中で、真莉の歩みを止めるために、柑菜はその名前を叫んだ。


「あら……あなた……」
< 153 / 223 >

この作品をシェア

pagetop