ケーキ屋の彼

「美鈴先輩、先輩ってもしかして、パティシエのこと好きなんですか?」


授業が終わったあと、チューターとして授業に出席していた美鈴に、涼は疑問を投げかけた。


教室にはもう誰もいないし、今が5限の授業だったため、次に使うこともなく、静かだ。


その沈黙の中待つ答えは、涼にとっても、そして柑菜にとっても、それ自体では複雑な心境になるであろう。


自分よりもずっと仲が良くて、ずっと大人で、近くにいることができて、そんな人が好きな人の周辺にいると知ったら、穏やかな気持ちではいられないはず。


「……うん、って言ったら、何か困る?」


意地悪くそう言う美鈴に、どう返事したら良いか、すぐに答えが出ず、涼は黙ってしまう。


その沈黙を、美鈴から破った。


「柑菜さんに関係あるとか?」


「それは……ただ、俺が聞きたいだけですよ」


嘘ではない、だけど、質問には答えていない。


「そっかあ、……うん、そうだよ、涼くんの言う通り、ずっと片思いしてる」


涼が質問に答えなくても、美鈴はなんとなく分かっていた。


乾いた風が、2人の間を通ったように、涼は感じた。
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