地味OLはシンデレラ
「お邪魔します」
「適当に座って」

通されたリビングには、高級そうなソファーがあった。
聞けば、3LDKという和真さんのおうちに足を踏み入れ、やっぱり地味子の私とは住む世界が違うと思ってしまう。

和真さんはビール、私はジュースで本日二度目の乾杯をする。

「今日俺の知らない朝海をいろいろ見れた」
私はきょとんとしてしまう。
和真さんの知らない私?

「こんな華奢な身体なのに、ひとり戦う勇ましい戦士」
それは負けたら終わりだから。

「フランス語を流暢に話せる」
日常会話程度しか話せないけど。

「花を豪華に生けれる」
ちょっとだけお手伝いしたくらいだけど。

和真さんは優しく私の髪を撫でる。
そして、ぎゅっと強く抱きしめられた。

ええええ!?
この状況はなんですか!?
またしても頭の中パニック!!

「偽装婚約者の話だけど、辞めない。続けるぞ」
和真さんの低い声が胸に響く。

続けるの!?
だって必要性がないんじゃ?
もしかして万が一なにかあった時は演じてくれるってこと?
それにしても、和真さんの声ってこんなに心地よかったっけ?

「ただし、偽装じゃない。本物の婚約者だ」

ん?
本物の婚約者!?
「ど、どういうことですか!?」
これは夢?妄想?

「朝海、俺のモノになれ」

逞しい厚い胸板に顔を押し付けられ、私はしばらく言葉を発することが出来なかった。
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