それは星の最果てのようで。
「はっ、汀転校すんの!?」
まず反応してきたのは、とにかく明るい斐川(ひかわ)だ。
「んー…まあな」
「いや…急すぎんだろ」
「俺だって昨日言われたんだし」
「いつだよ?」
「再来週」
「はぁ!?」
淡々と続く会話の中に、とにかくモテる宮川(みやかわ)が来た。
「汀は転校すんの嫌じゃねえの?」
宮川が言った。
「んー…普通に嫌。新しくやり直すのとかめんどくせーし普通に今のこれが好きだし」
「そっか…まあ仕方ねえよな」
「おう」


と、まあそういう会話をしながら。
とりあえず女子という女子に告られたという自慢をしよう。
この際だから、と先輩や後輩にも告られた。
バスケ部キャプテンというのもあってなのだろうか。運動は出来るが勉強は底辺である(自慢にはならない)。
あ、でも全部断った。女の機嫌取りや感情の起伏基準はよく分からない。
つまりそういうのはめんどくさいの一言だ。

まあ、そんなこんながあって月日が経つのは早かった。
高校で『お別れ会』みたいなのがサプライズで開かれて花束や色紙を貰った。
引越し用のダンボールや荷物は業者に頼んで、俺と母さんで田舎のばあちゃんちに向かっているところだった。
東京から少しずつ離れていくたびに道路が悪くなっていく。
ガタンガタン、と揺れる車の中で花束が揺れて、ほのかに鈴蘭の香りがした。

「汀、ちゃんとお別れできた?」
「…まあメールとか電話あるし」
『別れる』という言葉は使いたくなかった。
ただ引っ越し兼の転校するだけで友達を辞める訳ではなかったからだ。
「ふふっ…そっか」
その様子を察したのか、母さんは運転しながらクスッと笑った。
その後はお互い何も喋らなかった。
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