ひとりぼっちのマル
雨の中で
僕は犬。
名前はマル。

小さい頃はママと一緒に
人間と暮らしていた。

でも、僕が少し大きくなったころ
「段ボール」という箱に入れられて
ママから引き離された。

薄暗くなってきた公園の
ベンチの脇に僕は箱に入ったまま
置かれたんだ。

僕の頭をなでながら
飼い主だった人間は

「良い人に拾ってもらうのよ」

そう言った。

僕に背を向けて遠ざかっていく人間に
僕は力の限り叫んだんだ。

「置いていかないで!僕、良い子になるから・・・」

でも振り向いてはくれなかった。

雨が降り始めても、僕は段ボールから
出ることもできず、雨を避けることも
できず、濡れて重くなっていく自分の
体を必死に丸まって暖めた。

「ママ、会いたいよ」


< 1 / 2 >

この作品をシェア

pagetop