麗しき日々
 夕方から、激しい稲妻が走り、大粒の雨が窓に当たり始めた。

 パソコンから印刷をクリックしたが、トナー切れの表示が点滅した。

 仕方なく、トナー交換をしょうとストックの扉を開けたが、在庫切れだ。

 どうしても印刷しなければならいし、このままインク切れにしておく訳にもいかない。



 三階の奥にある倉庫には、だいたいの備品が揃っている。

 私は自分のIDカードを差し込み、倉庫を開けた。

 薄暗い倉庫に電気を付け、トナーの在庫のある棚へと向かった。

 品番を確認し、トナーに手を伸ばした時だった。

 窓の外が一瞬明るくなったかと思うと、ビシッっと激しい音ともに、ゴロゴロと雷の音が響き辺りが真っ暗になった。

 停電だ…… 

 慌てて、トナーを手に取りIDカード差し込むが、何の反応もしない…… 

 しまった! 

 閉じ込められた! 

 窓へ向かうが、三階でとても外へは出られない。

 私はスカートのポケットから、スマホを出すと香へ電話をした。


「もしもし、停電みたいだね。仕事にならないし、飲みにでも行く?」

 香の呑気な声がスマホから聞こえる。


「そ、それどころじゃないの! 倉庫に閉じ込められちゃったよ~」

 私の泣きそうな声に、香が慌てたのが分かる。


「えっ、マジ、直ぐに、なんとかするから!」


 香の叫ぶ声とともにスマホは切れた。



 辺りは暗く、雷のヒカリと、雨の音だけが響いて、なんだか心細い……


 スマホの着信音が鳴る。

 慌てて、スマホの画面を耳に当てる。


「大丈夫、湖波? 今、メンテナンスに連絡したから、直ぐに開くと思うから!」


「うん…… ありがとう……」

 と言っては見るが、泣き出しそうだ……


「少しの間だから頑張って!」


「うん……」


 スマホが切れると、また激しい雨音だけが響き泣きそうだ……


 激しく、稲妻が光った時、「コツコツ」と窓を叩く音に気付いた。


 恐る恐る音のした窓に近づくと、鍵を開けろとジェスチャーする副社長の姿があった。

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