羽化

不器用なんだなぁって思った。

わたし、吉田がそんなに自分に負い目感じる子だったなんて、気が付かなかった。

……そうなんだ。

隣にいたわたしにさえ気付かせないくらい、不器用なんだなって……思ったんだ。

「吉田、かっこいいじゃん」

わたしは心底から言った。

それを吉田は、同情されてると思ったのか、かぶりを振って否定したがったが、かまわず続けて言った。

「だってさ、わたしだったら誰か好きになっても、告白なんて、なかなかできないもん。貴司にだってさ、向こうから誘われてだもん。わたし、全然かわんないよ? 吉田とかわんない。大人なんかじゃ全然ない。いいじゃん、吉田。わたし、吉田が足引っ張ってるなんて思わないよ。そりゃね、ぶっちゃけ失敗はしてることあるよ。うん。でもね、がんばってくれてるから、そんなの帳消しんなるくらい全然ついてこられてるんだもん。吉田はわたしと違ってまめだしね。データ管理じゃ、もうわたしと大差ないよ。ホントだよ? だから泣くなって。泣いたら、化粧崩れるだけ。損だよ? ねえ――」

吉田は俯いたまま聞いていたが、わたしがそこまで言うと顔を上げ、わたしの胸に顔を埋め、なお泣いた。

しかし、それまでと少し違ったのは、

「い、石野さん、……私、だって、石野さんが失敗してるの、直すこと、……あるんですからね」

聞き慣れた憎まれ口を叩いてくれたことだった。

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