羽化

講習に出てしまい仕事場で会わなくなってから、吉田とはちょくちょくメールをやりとりするようになった。


『どうだった? 今日』

『今日は開発課で、いろいろ実験させてもらいました』

『開発課? 押井君っているよね。彼どうだった? 真面目にやってた?』

『押井さん……ちょっと顔わかんないです。(すいません)私の担当してくださったのは、江本さんって方でした』

『ごめん。わたしはそっちが顔うかばない。何年目の人?』

『きいてないです。女の方に年齢きくのは、ちょっと』

『もしかして、メガネの女の人?』

『そうですよ。物腰柔らかで、石野さんにちょっと似てました』

『ちょっと、わたしまだ二十四だよ。そんな大先輩といっしょくたにしないでくれる』

『お子さんがふたりいるんですって』

『うそー。結婚してたんだあの人』

『失礼です! 私ちょっとお風呂入ってきます』


こんな他愛ないやりとりを毎日一時間ほどする。

それである日、こんなメールが送られてきた。

『どうしましょう。どうもこうもないんです! 石野さーん!』

私は何事かと思って、すぐに『どうしたの』と返信する。

すると、一分経たずに返事が来た。


『明日、営業課で、担当定元さんですー』


それにわたしが、

『あっちゃー気まずくて仕方ないだろうなぁ』

と返信すると、

『どうしてですかぁ! 担当が知ってる人なんてラッキーじゃないですかー』

と返事が来た。

わたしは、やっぱこいつ若いなぁ、と思った。


< 39 / 51 >

この作品をシェア

pagetop