野獣は甘噛みで跡を残す
Ⅲ………勘違い×good evening
 アパートの白い外壁が見えたとき、バックの中から着信音が聞こえてきた。
 
 歩道の端に寄って立ち止まり、スマホを取り出し画面を見て「………最悪」思わず口から出てしまうくらい最悪な相手からの着信には嫌な予感しかないので切れるまで待つ。
 
 ふと音が鳴り止みほっとしたのも束の間、着信履歴を見て驚いた。
 
 25件って。
 
 しかも深夜からずっと掛けてきている。
 
 普通なら何かあったのかとすぐに掛け直すところだけど、あの人の場合、自分が困ったときしか連絡してこないと分かっているし、そしてその困ったことがお金か女性問題しかないことも分かっているから無視するのが一番。
 
 私はともかく両親共に真面目だというのに、どうしたらヒモを立派な職業だと言い張るろくでなしが生まれるのかさっぱり分からん。
 
 着信履歴は見なかったことにして、LINEのメッセージを知らせるアイコンをタップした。
 
 おはよう。昨夜は大丈夫だった? 
 白石君にちゃんと送ってもらえた?
 
 それは同窓会にも参加していた市来実花からのメッセージで、日付は今日の朝、八時にきたものだった。
 
 おはよう
 昨夜はごめんね
 
 昨夜は………と、打ち掛けて一旦指を止める。
 
 暫く画面と睨み合った末、中途半端なところで止まった言葉を消し、打ち直した。
 
 ちゃんと送ってもらったよ
 
 メッセージを送るとすぐに既読が付いた。
 
 気にしないで
 白石に絡む桜子面白かったし
 で?
 
 ん?
 
 本当に送ってもらっただけ?
 
 そうだよ

 えーつまんない
 本当に何もなかったの?
 
 本当に本当に何もない

 ちっ
 
 
 
  
 
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