君を愛していいのは俺だけ
一度目は偶然

 けたたましいアラームの音で、目が覚めた。
 ついさっきまで見ていたはずの夢が、どんな内容だったかは瞬時に忘れてしまって、ぼんやりとした頭が覚醒していく。


 七月の朝は、蒸し暑い。
 シャワーを浴びるために洗面室に入れば、寝癖で毛先が跳ねたセミロングの黒髪と、起き抜けの自分が鏡に映った。


「あーぁ、行きたくないな……」

 欠伸にため息を混ぜ、シャワーを浴びて出勤の身支度にとりかかる。


 あと一カ月ほどで、憂鬱な朝は終わるのだから……そう思って頑張ってきたけど、やっぱり気が重い。


 レースのスカートと、身体のラインを拾わないゆったりとしたTシャツを纏い、裾をスカートに入れてベルトを巻き、アクセントを付ける。

 憂鬱さを後押しするような夏の日差しを、日傘で遮って駅まで急いだ。

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