君を愛していいのは俺だけ
「ちょっと、ふたりとも」
元木さんに言われて視線を送ると、外出先から戻ってきた周防さんがいた。
「社長! お疲れ様です!」
物怖じしない性格の桃子ちゃんは、彼が目の前にやって来るなり声をかけた。
私はその隣で、なにも言わずに身を引いて様子を窺った。
「お疲れ様。今日からだったよね、頑張って」
「ありがとうございます!」
彼は私たちの顔を見てからそう言って、社に戻っていった。
格好いいと褒めちぎる桃子ちゃんに話を合わせつつ、中途入社の私たちのことを知っていてくれたことに感激する。
もし、彼が陽太くんなのだとしたら、私を覚えていてくれてもおかしくない。
身代わりでお見合いをした時、柚ではない私になにか言いそうなものだ。写真を見ていないと言っていた彼は、本当に私が柚だと思っていたのかもしれない。