君を愛していいのは俺だけ

 じっと見つめられると、視線を逸らせなくなる。

 付き合ってたあの頃もそうだった。
 彼の瞳にとらわれて、真っ赤になった私を抱きしめてくれたり、キスをしてくれたり……。


 
「さすがに日付を跨いでまで、女の子の部屋にいるわけにはいかないから、そろそろ戻るね」

 ふと彼がベッド脇にある時計を見て、腰を上げた。

 今日が終わらなければいいのに。
 彼の気持ちが分かるまで、ずっと話していたいのに。


「ちゃんと鍵かけておけよ。じゃあ、また明日」
「おやすみなさい」

 ドアレバーに手をかけた彼は、最後に一度振り返って、あの頃と変わらない優しい瞳に私を映す。


「おやすみ、仁香」

 パタンと閉じたドアの鍵をかけると、私はその場に膝から崩れ落ちるように座り込んでしまった。
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