イジワル騎士団長の傲慢な求愛
セシルだけに届いた彼の宣誓は、力強く、それでいて甘い、決して違えることのない約束。

押し殺さなければと思っていたルーファスへの感情が、セシルの胸いっぱいにあふれて、こぼれ落ちていく。

同じだ。初めて出会ったあの晩に心奪われてしまったことも、この命のすべてを懸けても彼の隣にいたいと願う気持ちも。

やり場をなくして胸の奥に閉じ込めておくしかなかった愛おしさが、彼の言葉で解き放たれる。

「本当に、私でいいの? 私なんかが隣にいても――」

「当たり前だ」

何度も確認する自信のないセシルに、ルーファスはふっと困り顔で笑う。
その柔らかな笑顔をそっと近づけて、唇が触れる直前、彼らしい脅し文句を紡ぎ出した。

「頼まれたって、二度と離してやらないからな」

二ッと唇の端を跳ね上げて、意地悪に笑ったあと。
答えなんか待たずに、彼はセシルの唇を塞ぐ。

誓いのキスは、触れるだけの、ささやかな口づけのはずなのに。
唇の先から痺れるように、彼の情愛が伝わってくる。
湿った吐息がふたりの合間を縫って流れ込み、セシルの心を侵食していく。

もっともっと、深く口づけたい。
そう思っていたのは、きっとセシルだけではないはずだ。
やっと結ばれることを許されたのに、周囲の目線がいまだふたりの心を自由にしてはくれない。

だからせめて、少しでも長くこの愛で、唇を満たしていたい。
< 127 / 146 >

この作品をシェア

pagetop