イジワル騎士団長の傲慢な求愛
思わず顔を真っ赤にしてしまったセシルを見て、周囲の人々は頬を綻ばせる。
セシルからすれば、慣れていないのだから仕方がない。ずっと男の振りをしてきて、この信愛の仕草を自分ではすれど、されることはなかったのだから。

そんなセシルを見て、ルシウスは驚いたように瞳を大きくする。
乙女の純真さを目の当たりにして、喜ばない男はいない、思わずもう一度口づけると、今度こそセシルは恥ずかしさに顔を伏せた。

横でシャンテルがクスリと吹き出す。

「そろそろご容赦ください、ルシウス様。妹は病弱で長く部屋にこもっていたもので、殿方には慣れていないのです」

「っ、馴れ馴れしく何度も申し訳ありません、あまりにもかわいらしかったものですから――」

今度はとっさに答えたルシウスが自分自身の言葉に顔を赤くする。

頬を染めるふたりが視線を合わせると、その場がおもばゆくも微笑ましい空気に包まれた。

本当に初々しく、お似合いのふたりだと誰もが思った。
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