初恋マニュアル



「丸山さん、久しぶりだね?」



一人の子がそう声をかけてくる。顔を見ると愛里と同じ部活の子だった。



「丸山さん、色白ーい!」



今度はもう一人の子が私のうでをつかんで間に入ってくる。


この二人はたしか……愛里とカラオケボックスに入っていった子たちだ。


なぜか私の名前を呼んでくる彼女達の名前を、私は知らなかった。


仕方なく、うんとかまあとか、あいまいな返事をしてやり過ごしていると、それを見ていた愛里が困ったように私の顔をのぞきこむ。



「なんか美羽、きげん悪くない?」



そう言われてドキッとした。やっぱり、顔に出ちゃってる?



「そ、そんなことないよ?外、暑かったからボーっとしちゃってるのかも」



あわてて言いわけをすると愛里は、そぉ?と心配そうに私を見た。



「うん、そぉ」



私も愛里の目を見つめ返しながら、ウソじゃないよ?とうったえる。



「なら、いいけど」



まだ疑うようなそぶりの愛里に、私は話題を変えようとチラリと浴衣の方に目を向けた。
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