浅葱色の鬼
「ふぅ~ん においも味もねえな」



ガシャーン




私は、今


この百何十年で、1番間抜け面だろう








近藤に飲ませるはずの惚れ薬を
土方に飲まれ、私はもう一つの惚れ薬を
見事に落とした


ん?



まさか? そんなはずないよな?



「普通のお茶だ…当たり前だろ
おどかすな…湯呑みを割ってしまった」



「残念だったな? かっちゃんと浮気なんて
俺がさせると思ってんのか?」



「何の事だ」



平静装い、割れた湯呑みを片付ける



「惚れ薬」


「痛っ!」


心臓が跳ね上がり、湯呑みで手を切った



「動揺しすぎだろ!ったく!」



土方が、手拭いで指を止血する

触れている手が、熱い



「惚れ薬、残り2つ持ってるとキツネから
教えて貰ってたんだよ
紅音の考えそうなことは、わかる」



土方の手が私の頬を包み
唇が重ねられた



「相手がかっちゃんでも妬くんだよ
俺以外とこんな事すんな」



怒っている口調なのに
優しい口づけに、身を任せそうになる



「気安く触るな」



土方を押すが、ビクともしない



「大事に触ってんだ 文句言うな」



確かに大事にされているが
炊事場だぞ


「お茶、煎れないと」


「紅音…」



流されては、ならぬ



「土方、すまん」



「うわっ」



土方をひっくり返して、テキパキとお茶を
煎れる



抗議の目が、私に向いているが
土方をみないようにして、炊事場を出る








< 113 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop