浅葱色の鬼
朝餉の後



近藤と紅音は、壬生寺へ










「土方から、聞いているか?」


「ご長寿のことかい?」


「ごちょ…うんまぁ、それ
私みたいな力を持つ者が、昔はたくさんいたんだ
命(ミコト)と呼ばれ、命は決められた相手
同じ命と結婚しなくちゃいけなかった
私の相手は、すごくいい人だったけど
結婚前に病で逝ってしまった
私は、その命が好きで
生まれ変わるのを待った…
でも、必ず人の姿で生まれ変わるわけじゃなくて…
それに… 記憶は、引き継がれない
私は、諦めるしかなかった
だから… 京を出たんだ…」



うんうんと頷きながら
近藤は、静かに話を聞いていた




「それから…江戸で、新しい恋をした
私は、妻になりたいと言ったが
その人は…戦に行くと言ったんだ
怪我なら治せるから、なにが何でも
帰って来て欲しいと頼んだ
彼は、私を守る為に戦うからと言った
帰って来ると言ってくれなかったから
戦場に行けば、怪我を治せると思って
戦場にも行った
私が、彼を見つけやすいように
色んなものに赤い糸をつけると
彼は、すごく気に入って
武具に赤紐を使うと言って
赤紐を…」



そこで、紅音は声を詰まらせた



「その人の生まれ代わりが、歳なんだね」



コクリと紅音が頷くと



「お互い、惚れ直したという訳か」



「もう…会わないように
京に戻ったのに… どうして…」


「もしかしたら
蒼は、初恋の彼の生まれ代わりかい?」


「……そう
察しがいいな」


「縁 だろうね
生まれ代わっても、紅音を大切に思う者と
出会うようになっているんだろう
俺や、新選組とも縁が出来たから
何度でも会えるだろう
逃げても、会ってしまう
なら、受け入れてしまえばいい
記憶は、紅音にしかない
俺は、歳には言わないよ
今まで通りでいいじゃないか
蒼とだって、仲良くやってるだろう」



「猫と人では、違う」



「歳も猫も似たようなものさ」



「え…」



「大きな猫だと思えばいい」


「は?」


「はっはっはっ!」



「……相談役を間違えた」



「なぁーに!間違えてないさ!
大きな猫!!はっはっはっ!」



「……大きな猫……ね…」



「ふふふっ 120年もかからなかったなぁ」


「ん? なんだ?」


「なんでも!さぁ!猫たちが待ってる!
戻ろうか!!そこの草を猫じゃらしに
持って帰ろう!!はっはっはっ!」


「はぁ…」




屯所に戻ると

蒼を膝に乗せ、そわそわと待っていた
土方に



「ほらほら!おいでぇ~」



近藤が、草をちらつかせた



「猫は、こっちだろ!」


「歳も喜ぶかと思ってな」


「んなわけねぇーだろ」


「紅音、猫じゃらしは、好まないらしい」


「やる前からわかってたくせに……」


「はっはっはっ!」












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