浅葱色の鬼
先日の仕事の報酬が出た日


それぞれの家族も交えた宴がひらかれた



おまさと茂のそばで、紅音も酒を呑む




「おまさ、つまらなくなったら帰ろう」

「まぁ!紅音ちゃんたらっ!」

「なぁ おまさ…
原田の仕事は、危険だ…
もしも… とか、考えたりしないのか?」

「考えないことはないよ
でも、うちの人強いから!
ふふふっ 土方さんのこと?」

「…なぜ、土方の名が出てくる」

「だって、さっきから土方さんばかり見てる
気になるんでしょう?
土方さんも紅音ちゃんが好きなんでしょ!」

「アイツは、惚れっぽい
私じゃなくてもいいんだ」



そう言って、酒を呑む紅音に
おまさが首を傾げた



「なんや?昔から知ってるみたいに…」



紅音の手が止まる



「そんな気がするってこと!
ほら!デレデレ鼻の下伸ばしてるだろ!」


「ヤキモチ妬かないの?」


「妬かない… 私は、土方の嫁じゃない
むしろ、早く他の女とくっついて
幸せになって欲しいくらいだ」


「そうなん?お似合いなのに…
あら!茂~!よしよし!」


「茂!こっちにこい!」

泣き出した茂を
おまさから抱き上げると
ニコニコと笑いごきげん


「キツかったら別室で横になれ
元気があるなら、原田に酌でもしてやれ」


「紅音ちゃんは、もう飲まないの?」


「ん」


大事に優しく包み込む仕草に
おまさが微笑む


「茂は、紅音ちゃんが好きなのね」

「おまさが原田を気にしてるから
気を使ったんだ な? 茂?」

「ほな、行ってくる!」


おまさが原田のところへ行ったあと

紅音が、茂に問いかけた


「私は、茂の重みもぬくもりもわからぬ
茂は、私がわかるのか?」


「ふわぁ~」


大きく背伸びをして、スヤスヤ


「蒼みたい… 都合悪いと寝たふりする
茂~ 起きろ~ 話そう~」


夢中で茂を起こそうとしていると


「寝てるのに、起こすなよ
クククッ 紅音の子みたいだな」


土方が、紅音の後ろに立ち
座るのと同時に、紅音を茂ごと
抱き膝に乗せた


「おろせ」


「なんでだよ」


「他の女と飲めばいい
私は、茂と遊ぶ」


「紅音と俺の子が出来たらさ
こうして日なたぼっこしような」


「……土方、私は人にならない限り
懐妊しない
それに、人になれば300日で死ぬ」


「は?」


「だから、私は妻にはならぬ」


「なんで人になったら300日で死ぬんだ?」


「結婚して人になり、子を産めば
女命の役割は終える
子を育てるのは、結婚しなかった女命
そういうことになっている
だが、私以外に命が存在しているかすら
わからないのに
人になり、子を産めば
土方の寿命が来る頃に、やっと3つ4つ
の子供になる
土方が死んだ後は、誰が育てる?
普通の女と恋をしろ
子孫を残すことは、武士の務めだ」


「子を産まなければ、どれくらい生きる?」


「そんな話は、聞いたことが無い」


「例えば!子は、親をなくした子をもらい
紅音は、懐妊さえしなければ
普通の人として、生きられるんじゃねぇのか?」


「そんな賭け事は、しない
おーい!そこの女!副長が相手をしろって」


「は?んなこと頼んでねぇ!」


「茂のおしめを替えてくる
仲良くしろよ」


「あ?紅音まだ、話終わってねぇぞ!!」







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