浅葱色の鬼
「痛っ!」


夜中、紅音の声に驚いて
慌てて灯りをつける


「どうした!?」

「…ん?」


紅音の額に手を置いた


物凄い熱…



「山崎」


「はい」


「すまん やはり熱が出たようだ
それに、どこか痛むらしい」


「紅音?わかるか?」


「な…に…?」


「痛いんどこや?」


「…ない」


「いや、確かに痛みを訴えたんだ」


「今は、痛みがないんやろな」


「としさん…は、怪我… 大丈夫?」



紅音は、過去の記憶の中にいるのか?
自分の体が辛いのに、俺を心配して…

そっと頬を撫で


「大丈夫だ」


「そう…よかった…」


安心したのか、ニコリと笑ってそのまま
眠った



一体、どんな夢をみているのか










風邪が治ると



「なんだ?土方?私の顔に何か?」


「2日間寝たきりだったから
ヨダレの跡が出来てんぞ」


からかってみると

予想外に顔を赤らめ


「洗ってくる!」


部屋を出て行ってしまった





いつも通り女中として働く紅音に
安心した俺は


紅音がいることが、当たり前になっている


そのことを改めて怖く感じた





人になることに、希望を持っている

そんな紅音と違い




この日常に、紅音がいなくなることを想像し、弱気になる一方だった









春は、すぐそこなのに




















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