浅葱色の鬼

紅音

懐かしいような気持ちになるのに
見覚えのない景色


私を大切にしてくれる新選組の皆と
島原へ向け歩く


近頃、彼らの名前を思い出せなくなり
誤魔化すのに、必死になっている


何度も名前を覚えようとするけど


どうしても


覚えられない



女中仕事にも支障が出ている



私は、病かもしれない















ご迷惑になる前に、新選組を去ろうと考え
懐の『外出禁止』で留まる


私の頭には、その繰り返しばかり


歩きながら、屯所での自分の思考に
気がつく



「紅音さん!
今日は、たくさん呑んでもいいですよ!」


「あ、ありがとうございます」



旦那様より、私と過ごす時間の多い人
彼は、体調を崩すことが多いから
看病で、付きっきりになる
旦那様の弟みたいな存在!


「久しぶり!」

「え!?あ、はい」


お店の方? 私… わからない


「女将、紅音とは、初見だろ!!」

「あー、そうや!そうや!」


旦那様が、女将さんに言うと
女将さんは、にこりと笑っていた


でも、焦っている様子から
きっと… 会ったことがあるのね


旦那様から離れ、他の女中達と一緒に
料理を楽しんだ


お酒をたくさん呑み、陽気になる
皆さんを見て、私もあんなになるのかと
思ったら、お猪口に手をのばせなくなった



「ちょっと、厠に失礼します」



宴を抜け出し、一息






「具合悪いの?」

「え?」



振り返ると、知らない男性が立っていた



「ごめん 驚かしたかな?」


「すみません ちょっと風にあたってて
ぼーっとしてたので!」


私を心配してくれた方を


「平助じゃねぇか!」


私の様子を見に来たらしい方が呼んだ


「お知り合いですか?」


何となく気になり質問をした



平助と呼ばれた方は、にこりと笑い


「春頃まで新選組にいたんだよ」





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