クールな王太子の新妻への溺愛誓約

「……はい?」


名前は呼ばないが、マリアンヌをクレアとして扱う。その意図がいまひとつわからず、マリアンヌは小首を傾げた。


「こういうことだ」


レオンはそう言うなり、マリアンヌを引き寄せる。その腕にしっかりと抱き留めた。

さっきよりも力強さを感じ、マリアンヌの鼓動が速まる。ただ、その腕の中でマリアンヌは戸惑うばかり。体が硬直してしまった。


「もう私のそばから離れるな」


レオンの甘く切ない声が耳の奥に響き、マリアンヌの胸が震える。
どうしようもないほどにレオンを愛しく感じる。“氷の王太子”と呼ばれるレオンに会ってすぐに惹かれたのは、マリアンヌの中に眠るクレアの記憶のせいだったのだろうか。

ためらいながらも、マリアンヌは自分の腕をレオンの背中へと回した。そうせずにはいられなかった。


「レオン様……」


呟くように名前を呼ぶ。

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