臆病なきみはうそをつく
「おい、担架持ってこい……!早く!!」

「こっちだ、こっち!先生呼んできて!」



(………ん?)


校内がやたらと騒がしい。

グラウンドの方からだった。


「ソフトのボールが、応援している子に当たったんだって」

「なんか倒れちゃって起きないらしいよ」

「マジかよ」


がやがや騒ぎながら野次馬たちがグラウンドに出ていく。


(……ボールが…….当たって……?)


嫌な予感がした。

言葉では説明できない……理屈ではない不安が胸いっぱいに広がる。


私は震える足をグラウンドに向け

気づけば走り出していた。


息をきらし、グラウンドの人だかりへ。

ソフトボールの試合場。

試合は中断され、その応援席の方にみんなが集まっていた。

集まった人の中には、クラスメイトが多い気がする。

ますます不安は増していく。


人をかきわけ、人だかりの中央へ。

すると

「……!」



「おい、動かすなよ!頭打っているからな」

「しっかりしろ!聞こえるか!?」

「なあ、フユ!しっかりしろ、フユ!」


必死な声。

みんな必死に、ぐったりと倒れている男子に話しかける。

でも、彼は固く目を閉じたまま、ピクリとも動かない。

サラサラの髪が重力に従うように流れ、彼の目元をかくす。

白い肌。長いまつげ。細い身体。


「……ふ、冬室くん……!」


私は叫び声をあげ、わけもわからず、倒れている彼に駆け寄った。



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