あなたの運命の人に逢わせてあげます
Chapter 5

出逢ったのは、桜の花が咲く季節だ。

小学校の入学式の日だった。

「桜」の名が付くその小学校の校庭は、満開の桜並木に包まれていた。

講堂で式が終わると、小さな新入生のおれたちは教室に詰め込まれた。

おれの隣の席に座ったのは、中でも一際(ひときわ)ちっちゃな女の子だった。

おれはその子に名前を訊いた。

すると、その子がおれの方に顔を向けた。

目が合った。

おれの心を射抜くような、強い眼差(まなざ)しだった。

その瞬間、おれの心臓が止まった。

実際はそんなことはありえないのだが、確かにそう感じた。

あんなに突然、心が身動きできなくなったのは、あとにも先にもあのときだけだ。

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