嫌いになってもいいですか?
龍二は強引に私を振り向かせると、驚く私の唇を奪った。
動き出したエレベーターは、いつ止まるかわからないんだよ?


「__んっ! もうっ、人が来そうなとこでこういうことするのは止めて」


私はなんとか冷静になり、力いっぱい龍二の肩を押し返す。


「そんなに怒るなよ。嫌いになった?」
「なった、って言ったら?」


間髪入れずに聞き返した私の手を、龍二がぎゅっと握った。


「それでも俺は、一生手放さない。お前を」


龍二と一緒だと気苦労が絶えない。
奥さんになったら、もっとかもしれない。

それでも龍二の愛に溺れてばっかいないで、少しでも見合う女性になれるように。
恋も仕事も、一生懸命頑張るから。


「明日の夜は、ホテルを予約してるから」
「……えっ!」


龍二が耳打ちしたとき、ちょうど二階に着きエレベーターの扉が開いた。


「顔、すげー赤くなってる。ちょっと冷ましてから売り場に来い」


先にエレベーターを降りた龍二が、小さく振り向く。
そしてなんでもお見通しな目で顔を熱くした私を見て、ふっと微笑んだ。


end
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