嫌いになってもいいですか?


ふたりで寝るには充分広い、龍二のベッドの上。
シンプルな電気スタンドの白熱灯だけが、私たちを照らす。


「今夜は……しないんだね」
「もっと、がっついて欲しいのか?」


龍二は天井を見つめたまま、腕枕をする手で私の口元をそっと撫でる。
その手に触れて、指先にキスをする。


「龍二って結構、ヤキモチやきなんだね」


私は龍二の顔を見上げる。すると、


「今頃気づいたのか」


呆れたような声で言った龍二は、私の頭の下からゆっくりと腕を抜き、体勢を変えて向き合った。


「誰にも触らせたくない」


既視感のある目。
催事場で見た、強い眼差しと同じ。


「俺以外、ずっと」


これを幸せと言わずして、なにを幸せと言うのかな?


「好き」
「バカ。煽んな」


それはあまりにも真剣で、困ったような顔だったから、ちょっと予想外で。
彼氏の新たな一面に、胸がききゅんとした。


「足治ったら覚悟しろよ」


龍二の顔が徐々に近づいてきて、私はそっと目を伏せる。


「他のことなんて、なにも考えられないようにしてやる」


それってすごい、贅沢……。
私は龍二の背中に腕を回し、ぎゅっと抱きついた。
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